2023-07-24【日本特許法】日本のソフトウェア発明の出願要領

日本で、ソフトウェアの特許出願について、最も多く拒絶される問題は、「明確性要件を満たさない」ことと「自然法則を利用していない」ことである。

(Ⅰ)★「明確性要件を満たさない」について
☆特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載について、発明が明確でなければならないことが規定されている。
※明確であるかどうかの判断基準:
(1)基本の原則
発明特定事項に技術的な不備があった場合、発明が不明確である場合、明確性要件を満たさないと判断される。
発明特定事項の技術的意味を当業者が理解できず、さらに、出願時の技術常識を考慮して発明特定事項が不足していることが明らかであれば、発明が不明確となる場合になる。
(2)
しかし、発明の範囲が明確であっても、発明特定事項の技術的意味を理解することができず、さらに、出願時の技術常識を考慮して発明特定事項が不足していることが明らかであれば、新規性、進歩性等の特許要件の的確な判断ができない。このような場合は、一つの請求項から発明が明確に把握されることが必要であるべき特許請求の範囲の機能を担保しているといえないから、明確性要件違反となると認定される。
また、発明特定事項同士の技術的な関連がないため、発明が不明確となる場合になる。
☆例:
特定のコンピュータプログラムを伝送している情報伝送媒体
説明:
情報を伝送することは伝送媒体が本来有する機能であり、「特定のコンピュータプログラムを伝送している情報伝送媒体」との記載は、特定のコンピュータプログラムが、情報伝送媒体上のどこかをいずれかの時間に伝送されているということにすぎず、伝送媒体が本来有する上記機能のほかに、情報伝送媒体とコンピュータプログラムとの関連を何ら規定するものではない。

(Ⅱ)★「自然法則を利用していない」について
☆特許・実用新案審査基準の第Ⅲ部 第1章 2.1.4 「自然法則を利用していないもの」により、請求項に係る発明が人為的な取決め(例:ゲームのルールそれ自体)に該当する場合は、その請求項に係る発明は、自然法則を利用したものとはいえず、「発明」に該当しない。

※要領:「明確性要件を満たさない」と「自然法則を利用していない」などの問題で拒絶されることを有効に回避するには、以下の出願要領がある。
1、請求の範囲において、発明特定事項に従って当業者がその技術的意味を理解することができるかどうかを考量し、発明特定事項同士の技術的な関連が必要である。
2、ソフトウェアの発明は、ソフトウェア自体の機能や方法だけの出願ではなく、ハードウェアの機器と共に出願する。機器は、コンピュータ以外の既定機能を有するものが必要である。
3、ソフトウェアの機能は、単なる人為ルールによる運算や出力ではなく、機器で執行される技術性のある作動であることが好ましい。

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