2026-01-07[特許出願、商標出願]農業用害虫対策mRNA技術がワクチンに転用?バイエル、ファイザーとモデルナを特許侵害で提訴

本来は害虫駆除を目的として開発された農業技術が、人命を救う新型コロナウイルスワクチンへと転用されたのか。世界的なワクチン特許紛争が、再び大きな波紋を広げている。

ドイツの製薬大手バイエル(Bayer)は6日、米ファイザー(Pfizer)およびモデルナ(Moderna)などの製薬企業が、新型コロナワクチンの製造において、同社子会社であるモンサント(Monsanto)が1980年代に開発した農業用mRNA関連技術を無断で使用したとして、特許侵害で提訴した。

ロイター通信によると、バイエルは訴状の中で、モンサントの研究者が当時、作物の特性向上を目的に、mRNA(メッセンジャーRNA)の安定性を高める重要な技術を開発したと主張している。同社は、ファイザーやモデルナが新型コロナワクチンの開発過程において、この農業分野向け技術の概念を遺伝物質の安定化に転用したことが、特許侵害に該当するとしている。

さらにバイエルは同日、米ニュージャージー州の連邦裁判所において、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)に対しても提訴。同社のワクチン製造に用いられたDNA関連プロセスが、同特許を侵害していると訴えた。

注目されるのは、バイエル自身が新型コロナワクチンの研究開発や販売には関与していない点だ。バイエルの広報担当者は、今回の訴訟において、被告企業によるワクチンの製造・販売差し止めを求めるものではなく、「具体額を明示しない金銭的損害賠償」を請求していることを明らかにした。

請求額は公表されていないものの、財務資料によれば、パンデミック収束後の2024年においても、ファイザーとバイオンテック(BioNTech)のワクチン売上高は約33億ドル、モデルナも約32億ドルに達しており、侵害が認定された場合、賠償額は巨額に上る可能性がある。

混迷深めるワクチン特許紛争
この訴訟を受け、モデルナの広報担当者は「提訴を認識しており、自社の権利を断固として守る」とコメント。一方、ファイザー、バイオンテック、ジョンソン・エンド・ジョンソンは現時点でコメントを発表していない。

新型コロナワクチンを巡る特許訴訟は、これまでも複雑な様相を呈してきた。モデルナは2022年に、ファイザーによるmRNA技術の特許侵害を訴えている。今回、バイエルが「農業バイオテクノロジー特許」を切り口に参戦したことで、数百億ドル規模の利害が交錯する法廷闘争は、さらに激化する見通しだ。