2025-12-01[特許出願、商標出願]ソフトウェア発明の特許出願、3つの重要ポイント

ソフトウェアという言葉は抽象的に聞こえるものの、すでに日常生活のあらゆる領域に深く浸透している。スマートフォン、スマート家電、自動車、さらには目に見えないスマート医療システムや工場設備に至るまで、ソフトウェアは重要な役割を担っており、現代社会はソフトウェアと切り離せない状況となっている。
しかし、こうした重要性にもかかわらず、ソフトウェア関連の発明が特許による保護を受けられるようになったのは、わずか約30年前からである。当時、ソフトウェアは技術者が思考によって問題を解決するための「手順」や「方法」とみなされ、特許ではなく、書籍や芸術作品と同様に「著作権」でプログラムコードの表現形式のみを保護すべきだとの考え方が主流だった。著作権が対象とするのはコードの「表現」であり、そのコードによって実現される「技術的機能」ではない。
だが、科学技術の急成長に伴いソフトウェアの機能は高度化し、ソフトウェア産業は経済成長を牽引する重要分野へと発展した。各国では、コード表現だけを保護し、ソフトウェアが実現する実質的な技術的機能を保護しないことが、技術革新の妨げとなるとの認識が広がった。産業競争力の確保を目的に、技術的性質を有するソフトウェア発明を特許で保護する方向へ政策転換が進んだのである。
ソフトウェア発明が特許保護を受けるためには、まず「特許適格性」という課題をクリアする必要がある。これは当該発明が特許法の保護対象に該当するかを判断するもので、特許法は自然法則を利用して問題を解決する技術的手段を保護する。一方で、数学的手法、ビジネス手法、ゲームのルールなどは通常、特許適格性を満たさない。
AI 技術を例に取ると、新しい数学的アルゴリズムを見いだしただけでは特許は認められない。アルゴリズムが実際にどのようにコンピュータシステムに実装され、情報処理や特定課題の解決に寄与するのかを明確に示す必要がある。
次に、特許出願書類に含まれる「明細書」は十分な記載が求められる。発明が解決する課題、期待される具体的効果、採用する技術的手段について、詳細かつ明確に説明する必要がある。AI の訓練データの独自性が特徴であれば、そのデータの出所、形式、内容を記載し、アルゴリズムの改良が核心であれば、その仕組みや手順を丁寧に記述する。当業者が内容を理解し、発明を再現できることが条件となる。
さらに、特許請求の範囲では、保護すべき発明の領域を正確に定義し、課題解決に不可欠な技術的特徴を列挙することが求められる。特にソフトウェア関連発明では、これらの特徴が実際に技術的効果をもたらしているかが重要となる。効果が商業上の利便性、計算処理、美的変化にとどまり、システム効率の向上、装置性能の改善、特定制御の実現といった具体的な技術的効果が伴わなければ、進歩性を裏付ける要素として不十分となる可能性がある。
ソフトウェアは現代技術の中心的存在となっており、その技術革新を保護する仕組みは企業競争力や国家発展の観点からも重要性を増している。ソフトウェア開発者やテクノロジー企業にとって、特許適格性、明細書の充実、特許請求の範囲設定といったソフトウェア発明特有の要件を理解し適切に対応することは、技術成果を守り、継続的なイノベーションを促すための鍵となる。

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